税理士試験

簿記論の取捨選択を実況してみる

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過去の記事で、簿記論の取捨選択方法について解説しました。

合わせて読みたい
【簿記論】「問題の取捨選択」のやり方について解説します。
【簿記論】「問題の取捨選択」のやり方について解説します。

しかし、言葉だけでは中々伝わらないこともあると思うので、実際に第74回の過去問を用いて、素読みを実況してみたいと思います。

ちなみに筆者は、第74回税理士試験の簿記論に合格しています。

過去問は国税庁のホームページからダウンロードできるので、下記のURLから各自開いてみてください。

問題資料
令和6年度(第74回)税理士試験試験問題、答案用紙及び正誤表
令和6年度(第74回)税理士試験試験問題、答案用紙及び正誤表

注意事項

今回の実況は、筆者が本番で考えたことをそのまま再現したものになります。

74回の簿記論第3問は基礎的な問題が多く、30点越えも全然狙える問題でした。
しかし、筆者は30点を狙わず、従来通りの25点を狙いました。

人によっては第3問に力を入れなければ落ちていたかもしれないので、筆者の考えはあくまで参考程度に考えてください。

また、今回の記事は問題のネタバレも含みますので、一度解いた後に見る事をおすすめします。

いざ、実況

第一問について

退職給付か…
まあ、第3問なら取るべき論点だし、余裕っしょ!

(流し読み後)
…なんか、ムズくね…?
少なくともテキストの知識だけでは対応できないし、第3問のそれとは難易度が違う。

ただ、勘定科目は記号で解答できるから、頑張れば部分点が貰えそう!

いったん後回しにして、全部終わってから解こう!

第二問について

問1の問題

資産除去債務とリースか…
情報量が多くて、面倒くさそうだな…

(流し読み後)

解答には時間がかかりそうだが、問われていることはそこまで難しくなさそう!

セール・アンド・リースバックもあるけど、問題集レベルの知識で十分対処できそう!

資産除去債務についても、将来CFの見積額変更があるけど、個別問題や答練で対策済みだから行けそう!

減価償却は、ごくごく普通の問題だ。
何も捻りがない。

それに、仕訳も記号で答えられるから、部分点狙えそう!

ここで高得点を稼ぐか否かで、勝負が分かれそうだ。
よって、第3問が終わり次第、最優先で解こう!

問2の問題

自己新株予約権か…
きちんと対策しておけばよかった…

自己新株予約権について

・直前期の講義で扱う応用論点。

・意外とそこまで難しくはない。

・直前答練では1度しか出題されたことがない。

・筆者は基礎論点の精度を高めるのに精一杯だったので、この論点の対策は殆どしなかった。

(流し読み後)

解答欄の数はそれほど多くないな。
多分、そこまで配点の来る問題ではなさそう。

それに応用論点のため、ここができなかったとしても大した差にはならなそう!

よって、ここは基本全捨てして、時間が余ったらやろう!

第三問について

【問題の全体条件】を読んだ感想

税効果は相殺しないのか…
なら、繰延税金資産と繰延税金負債のどちらかは取れそう!

法人税は逆算か…
誰も解けないだろうし、捨てよう。

1 現金

外貨は絡んでいるけど、難易度としては普通っぽい!
貯蔵品絡みや配当金等も含まれているし、部分点も稼げそう!

ただ、情報量が多いから、あとで解こう。

2 当座預金

定番の銀勘だ。

難易度も普通っぽいし、正解できそうだ。
しかし、未渡小切手が「1 現金」に絡んでいるから、後回しにしよう。

3 為替予約

為替予約か…

別に難しくはなさそうだが、第三問には60分しか掛けられない。
ここを解いたら時間切れになりそうだから、基本捨てよう!

したがって、ここで出てくる買掛金等の勘定科目はそもそも正解できなくなるから、ほかの問題で出てきても無視しよう。

※ここは思ったより平易で、点数の取り所だったそうです。
 筆者は第一問で予想外に正解できたので、何とか助かりました。

4 棚卸資産

簿記論の棚卸資産は時間がかかるし難しい。

だから捨てよう!(斜め読みなし)

※今回の棚卸資産は平易な問題でした。
 よって、この判断はミスです。

5 有価証券

今回はドル絡みか…

だからといって、特に難しそうではないな。
基礎期の個別問題や答練ができれば、普通に解ける問題だ。

それにこの論点は基本、必ず正解すべき問題だ。

よって、全部手を付けよう!

6 有形固定資産

有形固定資産は基本、正解すべき問題だ。

それに今回の問題は情報量が多いものの、それほど難しい知識を必要としなさそうだ。

よって、全部手を付けよう!

7 借入金

金利スワップ絡みか…
ただ、特別難しいことは問われていないな…

よって、手を付けよう!

8 新株予約権付社債

これは答練で散々対策した論点だ。

問題の難易度は普通っぽいな…
仕訳では多くの勘定科目が出てくるので、点数を稼げそう!

よって、手を付けよう!

9 債権の貸倒れ等

「6 為替予約」を捨てたので、売掛金は捨てたようなものだ。
したがって、一般債権の引当金は正解を出すことができない。

しかし、貸倒懸念債権については単独でも正解できる。
よって、一般債権は捨てて、貸倒懸念債権に手を付けよう!

また、引当金ができない時点で税効果も正解できないので、繰延税金資産は無視しよう!

10 従業員賞与

流し読みするまでもなく、余裕で正解できそうだ。

絶対手を付けなきゃだめだ!
税効果は無視!

11 自己株式及び剰余金の配当等

退職給付じゃないんかい!

だけど、問われていることは基礎期の問題集レベルだ。

恐らく、正解しなきゃならない問題だな。

素読み後の解答戦略

筆者が素読み後に決めた、解答の順番及び時間配分は

①第三問…60分

②第二問(問1)…30分

③第一問…20分

④第二問(問2)…時間が余れば

※素読み…10分

となりました。

第三問の振り返り

第三問は常に、25点程度を目標にしていました。
出題形式は総合問題で固定化されており、回答すべき場所はすぐに決められるからです。

また、ここでの安定した手応えによって、他の大問に落ち着いて取り組む事ができます。

今回は取捨選択を少々誤ってしまいましたが、それでも26~28点くらいは確保することができました。

合格する上では十分な点数です。

ちなみに筆者は、一番後ろの問題から解くことを習慣にしていました。
後ろの論点ほど情報量が少なく、平易な問題が多い傾向にあるからです。

そのため本試験においても、有価証券辺りまで回答してから序盤の論点に取り組みました。

第二問(問1)の振り返り

簿記論の個別問題は大抵、片方が難しく、もう片方が平易な問題になります。
今回の第二問(問1)については、平易な問題にあたります。

問題集レベルの実力で十分解答可能な基礎論点だったので、この問題を最優先に取り組んだ判断は正解でした。

第三問の安定した手応えによって、その後の問題も落ち着いて解答することができました。
自己採点では、21点程度のうち、16~18点を確保できていました。

第一問の振り返り

この問題は一見、時間をかけすぎると危ない気がしました。

しかし、問題をよく見てみると「この文脈なら、普段の計算(勘定科目)で正解できるんじゃないか?」といった箇所がいくつもありました。

これらを夢中になって掬い集めていたら、かなり解答欄を埋めることができました。

自己採点では、25点満点のうち、14点を確保できていました。

講師から聞いた話によると、ここを全捨てした方もいらっしゃるようです。
また、ボーダーラインが5~6点に設定されている予備校もありました。

したがって、ここで私が取った「何とか足掻いて、部分点を稼ぐ」という判断は大正解だったと言えます。

仮に第三問の出来は同じとして、第一問が5~6点であったとすれば、恐らく「ギリギリ合格できるかどうか」といった結果になっていたと思います。

第二問(問2)の振り返り

問2については結局、手を付ける時間がありませんでした。

しかし、25点中4点程度しか配点がないことを考えると、予想通り、解けなくても差にならない問題だったといえます。

そもそもこの論点を真面目に対策している受験生も、中々いなかったと思います。

問1でしっかり得点を確保していれば、この第二問は問題なくボーダーラインに乗ることができました。

よって、問2を捨てて第一問に懸けた判断は大正解だったといえます。

おわりに

いかがでしたか。

筆者の判断はあくまで一例であり、皆さんが同じように解いて最高のパフォーマンスを発揮できるとは限りません。

しかし、合格者がどのように素読みしていたかの情報は中々見つからないので、今回の記事は受験生にとって、かなり需要のあるものではないかと考えます。

「問題の取捨選択」の言葉はよく聞くが、具体的にどのようにすればよいのか…

これについてピンと来ていなかった受験生の皆様の参考になれば幸いです。

それでは、今回の記事は以上となります。

この記事を書いている人
nanco
nanco
税理士受験生
税理士を目指している大学3年生。
大学2年生から税理士試験の勉強を始める。

令和6年 簿記論に合格。
令和7年 財務諸表論・国税徴収法に挑戦。

税理士になるまでの備忘録や日常の出来事を発信していきます。
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